あの日の台所 5          

神様の植物

父にCBDオイルを使い始めたのは、2022年の秋のことだった。

帰国してみると、父は台所で貧血で倒れ、カウンターに腰を打って圧迫骨折の治療中だった。
ロボットのようなコルセットを24時間装着し、介護用ベッドが部屋に入り、ヘルパーが数日おきに来ていた。杖をついて歩く父は、見た目をとても気にする人だったから、「よぼよぼのおじいさん」になった自分が気に入らなかった。薬の影響で黒ずんだ肌も、外出を億劫にさせていた。

どうにかできないか、と思った。

コロナ禍の渡航を、感染もなく、精神的にも支えてくれたCBDオイル。弱っている父に試してもらえたら、その変化が一番わかりやすいかもしれない。そんなふうに、わりと単純に考えた。


CBDとは、大麻草に含まれる植物由来の成分だ。マリファナとは違い、ハイになる成分はほとんど含まれない。縄文時代から続く日本の麻文化、インドのアーユルヴェーダでの5000年の歴史、1850年代には女性の痛み止めとしても使われていた記録がある。

私たちの体にも、カンナビノイドという物質が存在する。背骨の周りに点在し、食欲、痛み、免疫、感情、睡眠など、体のスイッチのような役割を担っている。ところが、麻が生活から切り離されてからというもの、このスイッチが消えたままになっている。

それを「カンナビノイド欠乏症」と呼ぶ。

外からCBDを取り入れることで、そのスイッチをもう一度入れてあげよう、というのが目的だ。

WHOが有効性を認める症状には、アルツハイマー、パーキンソン病、不安、うつ、糖尿病合併症、心血管障害など、幅広いものが含まれる。


私が選んだのは、アメリカ・カリフォルニア州のKannaway社の製品だった。

てんかんの子どもたちを助けたいという思いから開発されたこのオイルは、650年の歴史を持つオランダの無農薬麻農場を原料とし、世界でも稀なトリプルラボテストを受けている。製造時、瓶詰め時、販売時の3回、第三者機関による検査を通過したものだけが届く。アンチドーピング認定も取得しており、医師用参考書PDRに唯一掲載されているCBDオイルでもある。

どこで育ち、どこで抽出され、誰が検査したか。それがわからないものを、弱った父に使う気にはなれなかった。


Yoko Imoto

オーストラリアと日本をつなぐ暮らしの記録

https://www.instagram.com/ikusaki_yoko/

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