介護のある暮らし

10時のコーヒー

退院から、21日が経った。

面会は104回。どんなに忙しい日でも、最後の30分だけでも、と病院へ走り続けた。あの頃は、毎日が集中できないと口をこぼしていた。

今度は、毎日家にいる。

デイサービスやリハビリ施設との契約が整うまでの10日間、3食の食事、入浴、着替え、薬の投与。それをひとつずつこなしながら、「これが介護というものか」と改めて思った。大きな子供がひとり増えたような毎日。オムツから食事まで、すべてを手伝う日々が始まった最初の夜、父が眠ってからシャワーを浴びながら、声をあげて泣いた。

これまで当たり前だと思っていた父は、もうそこにはいない。

これからの自分の人生を、どうやって生きていくのか。不安でしかたがなかった。

でも、こんな毎日を何年も続けている人が、世の中にはたくさんいる。仕事をしながら、子育てをしながら、介護もしている人たちが。

父は腎臓が弱く、これまでは簡単な食事で調整しながら透析を避けてきた。退院後は嚥下力も落ちたために、食事は柔らかく、とろみ剤も使いながら、料理のスタイルをまるごと変えた。

野菜はすべて茹でこぼし、水にさらしてカリウムを抜く。塩分を抑えながら、ごま油やあんかけで風味をつける。カロリーは落とさないように、質のいい素材とオイルを選ぶ。メニューが減った分、同じ素材でも味付けや調理法を変えて飽きがこないように工夫する。

病院から指示された目安は、1日カロリー約1600〜1700kcal、塩分6グラム、カリウム制限。カロリーだけ見れば、一般の大人とほとんど変わらない量だ。

父はよく食べてくれる。昔から、美味しいものしか口にしない人だった。だから残されると、口に合わなかったのだとすぐにわかる。「今日は外食しよう」「今日は自分で食べて」が通用しない今、私自身がもう一度、食について学び直さなければならなくなった。

Amazonで「腎臓病の食事」「腎臓病になったら読む本」を何冊も取り寄せ、読み漁った。1週間分の献立を先に立てることができれば、少し楽になれるかもしれない、そんなふうに思いながら。

父を送り出してようやく自分のためにコーヒーを淹れると、もう10時。

新聞を広げながら、横目でソファーを見て、10分だけ横になりたいとため息をつく。

自宅で介護をされている方、毎日どうされていますか?

Yoko Imoto

オーストラリアと日本をつなぐ暮らしの記録

https://www.instagram.com/ikusaki_yoko/

https://www.yokoimoto.com/
Next
Next

あの日の台所 6